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般若(はんにゃ)

能「葵の上」

 病床に伏す光源氏の正妻、葵の上のもとにあらわれた六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の生霊。離れゆく源氏への無念さや、葵祭りでの車争いの屈辱を晴らそうと、葵の上に取り憑き、激しく打ち据えます。病状の急変に僧が祈祷を始めると、唐織(からおり)の深紅の裏色を燃え立たたせ、「般若(はんにゃ)」の面に変じて、法力と争いますが、やがて祈り鎮められ成仏していく――。
 抑えても抑えきれない哀しみと怒りが、大きく裂けた口元や深い皺を刻んだ眉間、そして大きく見開いた金泥の眼に極まっていくようです。

般若(河内家重作 桃山時代)

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