京都新発見サイト 逸都物語

ホーム arrow みさとみちくさ arrow 十ニ月~比良木神社(ひらぎじんじゃ)と柊(ひいらぎ)
十ニ月~比良木神社(ひらぎじんじゃ)と柊(ひいらぎ) プリント メール
作者 たきねきょうこ   

柊の花 賀茂川では飛来するユリカモメが高く群れをなして、風花と見紛うばかりの寒の入り。すっかり散り透いた広葉樹の木々の足元には、柔らかに、ふっくらと降り積もった枯れ葉に、冬越しの虫たちがあたたかく憩う、師走・終い月・晦日月(みそかづき)。

 左京区・豊かな腐葉土にたっぷり地熱を蓄えこんだ糺(ただす)森を抜けて、下鴨神社の本殿を左に折れると、西南隅に比良木神社の小さな社殿が見え隠れしてきます。
神さびた御社の両脇には、灯心が柊の葉のかたちにくり抜かれたれた石灯篭が据えられていて、独特の風情をかもし出しています。

比良木神社の石灯籠 比良木神社は、正式には出雲井於神社(いづものいのえじんじゃ)と称される下鴨神社の境内摂社のひとつですが、その由緒は本社に劣らず古く、「延喜式」や「日本書紀」にも記載され、すでに承和十一年(844年)には、この鴨川西岸から東山までの一帯の地主氏神神社として、厚く信仰を集めていたと伝えられています。
古来より厄除けの神として崇敬され、祈願が叶うとお礼に何らかの木を献上するならわしなのですが、不思議なことに何の木を植えても柊の木に変じてしまうことから「何でも柊」と呼ばれ、京の七不思議に数えられてきました。今も、 玉垣の内外に植えられたモクセイの木が、ほとんど鋸のような葉を茂らせヒイラギ化しているのは驚くばかり!
昔の人々は献木が柊になるかどうかで、祈願の成就を占ったのだとか。

 モクセイ科の常緑喬木で、関東以西から台湾まで分布するこのヒイラギは、晩秋から初冬に白い可憐な花をたくさんつけて、ひっそりとほのかな香りを漂わせはじめます。
冬に花を咲かせるから「柊」なのではなくて、葉に二~五対ある鋭い鋸歯(きょし)に刺されると疼ぐ(ひいらぐ=痛む)ことから、「疼木」と名付けられたのだそう。
特にこの棘は鬼が嫌うと信じられ、節分には、柊の枝にイワシの頭を挿して門扉に飾る厄除けの風習が今もあちこちで行われています。
そういえばクリスマスに飾るのも、赤い実をつけた柊の葉。柊には洋の東西を問わず強い生命力と霊力を尊ぶ、人々の伝承信仰が今も宿っているようです。

 柊の花がすっかり散り終わる頃、比良木神社にも新春が訪い、よき年を願う初詣の人々と露店とで、糺の森あたりも賑わい立っていくことでしょう。

比良木神社社殿

比良木神社(ひらぎじんじゃ)

説明 社伝によると、御祭神の素戔鳴命(すさのおのみこと)は荒ぶれた武神であることから棘を持つ柊に結びつき、また同神がイワシを好んだことから伝承の節分行事が生まれたとされる。また節分の日には、柊の小枝をつけた御札が授与されている。
住所 京都市左京区下鴨泉川町59(Googleマップで表示
交通 京阪電車「出町柳駅」下車 徒歩10分
市バス「下鴨神社前」下車 徒歩5分
拝観時間 随時(宝物館は10:00~16:00)

 
< 前へ   次へ >