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ホーム arrow 洛々祭菜 arrow 六月~夏越祓(なごしのはらえ)と水無月(みなづき)
六月~夏越祓(なごしのはらえ)と水無月(みなづき) プリント メール
作者 たきねきょうこ   

 もうひとつ、この夏越の祓では、紙で作った人形(ひとがた)を川に流し、けがれを祓う「みそぎ」の神事が行なわれます。町内会を通じて、氏神さんから配られるたもとの大きな和紙の人形に、家族みんなの名前と性別、数え年齢を書いて、みそぎの川に流します。

 城南宮では、神苑の小川をぬけて、鴨川へ、「天神さん」で知られる北野天満宮では、かたわらを流れる紙屋川へ、東山区の市比売神社では高瀬川へ、北区の上賀茂神社では、橋殿から楢の小川へ、振り流されます。

風そよぐ ならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
                                        藤原 家隆 (新勅撰集)

人形(ひとがた)  祖母は梅雨時の使い痛みの出やすい膝や腰にあてがって、身体をさすり、息を吹きかけて、この半年のけがれを、人形に移していましたっけ。かなしさやせつなさ、憤りやあきらめ・・・半年間の想いを負った人形は、みそぎの川の流れに乗って、こころと身体のいたみを、文字通り「水に流して」くれるのです。

 そしてこの夏越にいただくのが、「水無月(みなづき)」です。三角の白いお新粉の上に、甘い小豆を散らした和菓子で、柏餅の済んだ「おまんやさん」の店先が水無月で彩られると、もう、初夏のよそおい。
 最近は白い土台の他に、腰の強い黒砂糖のものや、抹茶のものも作られて、それぞれを味わい分けていただくのも、六月(みなづき)の楽しみのひとつ。

 昔、六月一日に、京都の北・氷室から、貯蔵しておいた氷を、宮中に奉納するならわしがあったことから、暑さの増してくるさかり、その氷片にあこがれた町の人々は、氷の形に模して、三角の土台を作ったのだといわれています。甘く煮た小豆にも、厄除けの意味が込められていて、口まで三角に開いていただいては、これから訪なう夏本番の健康を祈ります。
 祖母の時代からのみなづき好きは、母へ、夫へと引き継がれていき、いつの間にか和菓子大好きの子供達に、しっかりと根をおろしています。
 この夏、みなづきをほお張るたくさんの子供達が、つつがなく夏を越すことの、おまじないのようにに育まれた、たくさんの意味合いを考え、その大切さに出会ってくれますように!

 私たち一人ひとりの、日々の暮らしが、なごやかですように。
 私たちを取り囲んでいる、自然の営みが、なごやかですように。
 私たちが、すべてのいのちと、なごやかに共生し、和合していけますように。
 夏越の祓いの「なごし」には、「夏を越す」ことだけでなく、「和し」の意味も込められているようです。

 



 
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