八月~地蔵盆とおいもさんの蒸したん |
作者 たきねきょうこ | |
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さて、地蔵盆のお楽しみのスケジュールはというと、まず初日(二十二日頃)の朝の百万遍。これは、数珠まわしと呼ばれ、大きな数珠を輪になって子供らがかこみ、念仏を唱えながら回していくというもの。中に何個か組み込まれているひときわ大きな数珠玉のついたふさがまわってくる度、数珠ごと持ち上げてあん、とおまいりするのであちらこちらで小さな頭と、じんわり汗ばんだ髪がせわしく上下するのも、いとおしげなならわしです。 お坊様によるおつとめ(読経)の後は、楽しみにしていた最初のおやつの時間。 午後になると、世話方の大人たちが、工夫しあった子供たちへの楽しい催し・・・金魚すくいやヨーヨーつり、紙芝居や紙細工、輪なげなどがはじまります。 やがて夕闇が迫ると、夜のお楽しみの盆踊りや、映画会、近くのお寺や公園を使っての胆だめしが行われます。浴衣で床几に腰をかけ、西瓜を頬ばりながら、線香花火の最後の火種を落とすまいと、背を丸めるのもこの時分。花火の終わりは地蔵盆の終わり、また夏休みの、そして夏の終わりをなしくずしに認めてしまうようで、あと片付けをためらって、また祖母にしかられたり。 今年もそれぞれのお地蔵さんの前で数珠をまわし、花火にはしゃぐ、つたない手つきの子供たちに訪なう夏が、どうぞ、すこやかでありますように。 地蔵盆が終わるころ、京都の町家は、もうすっかり秋へのしつらえ替えが済んでしまっていることでしょう。 |
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