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第四回 瓦のこと プリント メール
作者 水井康之   

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「近道しようか」と子供の頃に件(くだん)のオッサンにつれられて京都大学の構内を通り抜けたことがよくありました。
御蔭通りから京大のグランドを左に見て農学部、理学部を通り抜けて今出川通り百万遍へと抜けるのです。
ノーベル賞をもらわはった(貰われた)偉い先生方が勉強された建物のある場所です。

 

その農学部の鉄筋の建物のちょうど東北の向かい側に西洋の映画に出てきそうな平屋のエキゾチックな建物がきれいな庭の木立の中にあります。
この建物は、元京大農学部の演習林の事務所だったそうです、(現在は四明会と言う同窓会が使っておられます)その前を通る度に

「ええたてもん(建物)やろ、よう見ときや。それに、このたてもんの瓦がオモロイのや、京都でこの種類の瓦はここだけやで。」

と言われましたが、どう見ても何の変哲もない、よく街で見かける喫茶店の屋根の洋風のS型瓦が葺いてあるだけにしか見えませんでした。

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大人になってからヨーロッパを旅する機会があり、なんとはなく屋根瓦を見ていると、一寸変な感じがするのです。
京都の瓦の葺き方と流れが逆なのです、どの屋根を見ても右側から左側へ流れています。
道具の使い方や生活のしきたりなどなんでも日本と西洋は逆さだといいますが、瓦の葺き方まで逆さまだとはと思い、一大発見をしたような気になって後日友 人に瓦の話を得意になって話してみましたら、「何を云うてる、日本の屋根も日本瓦は左から流れているが、今使われているS型の洋風の瓦は京都でも右から流 れているよ」と云われ、それ以来、左からか右からか屋根瓦の葺き方が気になりだし、よく見ると成る程、日本の瓦は左から、ハイカラなS型瓦は右から流れて いることを発見しました。


そこで、件のオッサンの話を思い出して京大の農学部の、あのきれいなたてもんの事が気になり、見に行きました。
するとどうでしょう、ハイカラな洋風のS型瓦のくせして日本瓦のように左から葺いてあるではありませんか、今まで見てきた瓦で、洋風のS型で左から右に流れている瓦はこの建物だけではないかと思います。
ほんまに美しいエキゾチックで、そのうえ綺麗な珍しい不思議な瓦の屋根のこの建物が、いつまでも市民の目を楽しませてくれることを願っているのは小生だけではないと思いますが(現在は文化庁の保存建物に指定されています)。

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普通の日本の和風瓦 普通の洋風S型瓦
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珍品の日本の和風瓦 珍品の洋風S型瓦

そんなことを頭のすみに残っていたのでしょうか、この秋に島根県の出雲大社を訪れる機会があり、あのあたりの大きな民家の屋根が気になりました、棟瓦が 両端に大きく天に向かってそっているのですね、この様式は、朝鮮半島の棟瓦を竜に擬えた様式の影響があるのかな、と勝手に納得しつつ出雲の壮大な大社造り や、最近発掘された三組の大きな柱を見て、昔はものすごく大きかったことなど、いちいち感心して一回りしてきましたら、大きな神主さんの屋敷の前の通り に、おそらく大社の社家の屋敷と思われる門構えの屋敷の門と塀の瓦が目にとまりました。

立派な日本の和瓦なのに右から左へと流れて葺かれているではありませんか、すぐ京大のS型瓦を思い出しましたね。
京大は西洋瓦の珍品なら日本瓦の珍品は出雲大社にあったのです。
ほんまに大発見をした気になりました、またまた友人に自慢げに話していますが、ほんまかどうかは分かりません。
そんな瓦は珍しいことないよ、いっぱいあるでと、もし瓦について詳しい方がおられましたら「ほんまはこうやで」と教えてください、お待ちしています。

「イヤー失礼しました、では又」

 
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