八月~木槿(むくげ)と西林寺(さいりんじ)
作者 たきねきょうこ   

木槿(むくげ)白から薄紅・薄紫、一重から八重の花々で、
初夏から秋風が立つ頃までを、鮮やかに彩る木槿の花。

インド・中国を原産地とするアオイ科の落葉潅木で、
平安時代の少し前に渡来、灰白色の枝には繊維が多く、
折れにくいことから、生垣として利用されてきました。

  
木槿は百日花とも呼ばれ、夏の百日を疲れることない根気強さで咲き続けますが、その花は朝開いて、夕方にはしぼみ、翌日には散ってしまうことから、唐の詩人白居易は「槿花一日の栄」と詠い、はかない人の世の有り事と、無常とにたとえました。

 上京区にある西林寺には、木槿の花々にかこまれた小さなお堂に、「木槿地蔵尊」がおまつりされています。

 お寺の縁起によると、朝露にしだく木槿の花の下で、慶俊僧都が悟りを開いたその時、花々の蔭から地蔵尊が現れ、驚いた僧都はその似姿を石に刻み、お堂に納められたのだそう。

 そのはかなさ由、蓮花(はちす)とも呼ばれ、仏花とされる木槿の花々は、今年も地蔵尊のお堂周りを、手向けのように咲き競っていることでしょう。

 

西林寺(さいりんじ)

 

西林寺(さいりんじ)
説明
桓武天皇の勅命のよって創建された天台宗の古刹。
「木槿地蔵尊」は京都の名地蔵尊のひとつに上げられています。
住所
京都市上京区西陣玄蕃町46(Googleマップで表示
交通
地下鉄「鞍馬口駅」下車 南西へ10分
TEL
075-431-1529