一月~大徳寺・高桐院と藪柑子(やぶこうじ)
作者 たきねきょうこ   

藪柑子の実

 ひときわ底冷えの厳しかった松の内に、雪催いの小正月も明けて、睦月・壱月。舞い踊る風花の白らかさに、南天の朱赤の実が映えて、あらたかな年の始まり。

 北区・大徳寺の「金毛閣(きんもうかく)」と呼ばれる朱塗りの山門の脇をぬけ、禅寺特有のおごそかさが漂う方丈から松の緑に彩られた山内を西に折れると、やがて左手に高桐院の表門が見えてきます。

 ここ高桐院は、江戸時代初期の武将で、茶人としても名高い細川忠興(三斎)が、父・幽斎の弟、玉甫(ぎょくほ)禅師を開祖として慶長六年(1601年)に建立された細川家の菩提寺で、秋の紅葉の名所としても知られています。両側からの楓が包み込むように真っすぐ唐門まで続く参道には、棕櫚縄で結わえたすがしい青竹の垣が配され、敷石ごとに忠興公の高い美意識が香り立ってくるようです。

大徳寺参道

 その高桐院の客殿と書院の間の小じんまりとした中庭で、うつむき加減の小さな赤い実を揺らせているのが、藪柑子。冬の庭を彩るこのヤブコウジ、常緑の小低木で山橘(ヤマタチバナ)とも呼ばれ、古くから私たちの国の固有種としてその可憐な姿が愛しまれてきました。

 この雪の消遺(けのこ)る時にいざ行かな
山橘の実の照るも見ん(巻19)

 万葉集の中で大伴家持は、雪に映える真っ赤な実の趣を讃えた歌を遺しています。
ひっそりと湿り気を帯びた高桐院の中庭には、藪柑子の他に千両や万両のつややかな実ものが、それぞれの色目で庭の彩りを深め合っています。ちなみにこの藪柑子の別名を「十両」、カラタチバナを「百両」、ツツジ科のアカモノを「一両」と呼ぶそうで、「この高桐院の中庭には一両から万両すべての種類が揃って見られます」と御住職。
縁から身を乗り出して、あれは何両と確かめていくのも、またこの季節ならではの密かな楽しみごとのひとつです。
「雛侘助(ひなわびすけ)」をはじめ名椿がこの高桐院の庭を彩り始めるのも、もうすぐ。今年もつつがなく花々は咲き、おだやかに実を結んでいけますように!

藪柑子

大徳寺・高桐院(だいとくじ・こうとういん)

説明 細川三斎は茶人として「利休七哲」のひとりに数えられた名手で、書院は利休の邸宅を移築したものといわれています。また客殿の西には細川家の墓所があり、利休が秀吉に秘蔵の石灯籠を請われた折、裏面を欠けさせて退けたといわれる欠灯篭「無双」が、三斎とガラシャ夫人の墓塔となって今も遺っています。
住所 京都市北区紫野大徳寺町73-1(Googleマップで表示
交通 市バス「建勳神社前」下車徒歩5分
市バス「大徳寺前」下車徒歩10分
拝観時間 9:00~16:30