九月~萩と光悦寺(こうえつじ) |
作者 たきねきょうこ | |||||||||||||
九月の長雨を、細やかな花々や葉先にいっぱいしたためて、たわむ、萩の細枝。 山上憶良によって秋の七草の最初に歌われている、このマメ科の多年草は、野趣めいた風情で広く人々に愛され、万葉集の中でも、植物では最多の138首の歌に詠み込まれています。 また、もののあわれを匂い立たせるたおやかさと同時に、強靭なすこやかさで、御所の前庭に、路地の軒下に、また山の辺の庵の脇に植え込まれ、その時代ごとに、人々の暮らしを彩ってきました。 京都の北西、鷹峰に位置する光悦寺は、「寛永の三筆」と称され名筆をうたわれた、本阿弥光悦翁の住居跡を、没後、日蓮宗のお寺になさったもの。 境内の中ほど、楓の木々を囲むようにしつらえられた光悦垣を、この季節、萩の花々が彩りだします。 垣の手前の左手、厳かな松林に守られるようにたたずむ、苔むした光悦翁の墓碑からも、秋風に揺れる露を含んだ萩の風情が、垣間見えていることでしょう。
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